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執筆者の写真Mikako Hayashi-Husel

語学に近道はある?

更新日:2021年6月1日

最近、語学に近道があるのかどうかについて議論をする機会がありました。

ゴールを外国語が「使える」と言えるレベルとして、そこに至る近道があるかどうかは、なにが「近道」なのかという定義によります。

学習すべき内容を「飛ばすこと」を「近道」と考える人は、「近道がない」という主張をします。

目標レベルに達するまでの「時間・期間の短縮」を「近道」と考える人は「近道がある」という結論です。

両者の見方は対立・矛盾していません。たまたま「近道」という同じ言葉を使っていますが、それが指す内容は全く異なっており、言語学習の異なる側面を取り上げているにすぎません。


外国語を使えるレベルとは、日常生活はもとより、その言葉を使ってある程度仕事ができる、ヨーロッパ言語共通参照枠で言えばB2(英検・独検準1級)レベルでしょう。このレベルに達するには、基本的な文法と日常的な語彙プラス自分の専門分野の語彙数千語を確実に使いこなすための暗記・練習が欠かせません。この最低限の学習内容ははしょることができず、飛ばせばそれは「抜け」になってしまいます。その意味で「近道」はないと私は考えています。


この学習内容をより少ない労力で短期間に学ぶことは可能です。

普通の記憶力の持ち主であれば、学んだことを復習しなければ数日後には半分近く忘れてしまいます。つまり、復習しないこと、学習の間を空けてしまうことで学んだことをほぼ完全に忘れてしまうので次に手を付けたときには、また一からやり直さなければならなくなります。こういうペースでは何年かかっても外国語をモノにすることはできません。

できる限り多くの学習内容を長期記憶に定着させて忘れないようにするには、短期間に集中して学習し、復習を欠かさないことが肝要です。そして、物事をできる限り関連付けて覚えることで記憶する負担が減り、効率よく短期間で多くの知識を身につけられます。

「関連付け」とは、ドイツ語の単語 groß(大きい)を例にとれば、まず比較級 größer、最上級 größte、そして反義語 klein(小さい)、großmütig、großartig、großflächig、großformatig などの派生語、groß werden(大きくなる、大人になる)と同義の erwachsen werden(大人になる)などのようななんらかの連想によって繋げていくことです。

分野ごとに語彙を集めて覚えるのも「関連付け」の一種です。

例:die Küche 台所 → die Kochplatte クッキングプレート、der Herd コンロ、die Spüle 流し台、die Spülmaschine 食洗器、der Dunstabzugshaube 換気フード、der Kühlschrank 冷蔵庫...

単語の暗記にはAnkiWeb(スマホとPC対応)などのアプリを利用するのもいいでしょう。

もちろん単語の暗記だけではB2レベルに到達できません。かなり実践的な会話能力、ニュースなどの一方向コミュニケーションにおける高度な理解能力、その内容を自分の言葉でまとめる能力なども要求されます。それには毎日時間を取って目標言語に触れる、練習するなどをする必要があります。日を空けずに集中的にやれば、半年くらいでモノにすることも可能です。


私はドイツ語を大学の第二外国語として2年間勉強しましたが、週の学習時間は授業時間も含めてせいぜい5~6時間程度だったと思います。その成果は当時のゲーテインスティトゥートのレベル分けでGrundstufe II(現在のA1とA2の中間)でした。ゲーテ東京に週2で半年通ってからドイツへ行って、そこのゲーテインスティトゥートでのクラス分けは文法はMittelstufe I(B1)、会話能力はGrundstufe III(A2)だったので、会話能力を高めるためにMittelstufe Iの集中コース(1日4時間、週5日)に2か月通い、終了時にGrundstufeの修了試験(A2)を受けて合格しました。その後大学のドイツ語コースが始まるまでの3か月間独学で、大学のドイツ語コースクラス分けではMittelstufe III(B2)に入ることができました。半年間の集中コース(1日4時間、週5日)に通ったのちに大学入学に必要なドイツ語能力証明試験(当時はPNDS、現在DSH)を受けて合格しました。

つまり、ゼロ→A1とA2の中間まで2年、そこからA2まで半年、集中してA2→B2まで3か月、B2→C2まで半年かかったことになります。

PNDSを受けるまでの半年間では、週の勉強時間は授業の20時間の他、予習・復習・試験準備などで毎日少なくとも3~4時間、週25~30時間は勉強していたと思います。当時スマホがあれば、もうちょっと効率よく勉強できたのではないかと思わなくもないです。

それで試験に受かって大学に入り、授業についていけたかというと、それはまた全然別の話で。。。最初の1学期は授業のノートを取るのもままならない感じでした。一緒に試験に受かった子たちも「授業が全然分からない」と嘆いていたので、私だけじゃないとちょっと安心したものでしたが。ここで問題になっているのは、スピードだけではなく語彙力なんですね。大学の授業を理解するには語彙が圧倒的に不足していたわけです。


試験に合格することは、スタート地点に立つことで、そこから先は個人の要求水準にもよりますけど、ネイティブ並みの正しく流暢に外国語を運用できるレベルまではやはり遠い道のりですね。

もちろん、よくある「勢いでしゃべって通じるけどいろいろ間違ってる状態」でも本人がそれで困らなければ別に構わないとは思いますが。勉強方法も目指すレベルも人それぞれです。

でも初歩の段階では能力が安定してないので、ちょっと間を空けただけでかなり忘れてしまいます。やはりB2まで行けば長期記憶に入っている言語能力が十分あって安定しているので、そのレベルまでは集中して一気に到達した方がいいですね。



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