今年は2月20日が Weiberfastnacht 女たちのカーニバルでした。Karnevalshochburgen カーニバルの牙城・本拠地と言われるのは北からデュッセルドルフ、ケルン、マインツ。 昨日のWeiberfastnacht、女たちのカーニバルを皮切りにこの地域では Jecken 仮装した老若男女が通りを練り歩き、飲めや歌えの大騒ぎをする Ausnahmezustand 例外的状況になります。昨日は午前中のみ営業、今日もお休みにして、カーニバルのピークとなる Rosenmontag ローゼンモンタークも休みにするところもあります。
日本の方にはそもそもベルリーナーがどんなものか分からないかもしれませんので、ちょっと説明を。日本にあるものでこれに一番近いのは揚げパンです。いつだれが考案したものなのか諸説ありますが、恋煩い中の料理女が間違えてケーキの生地をオーブンではなく油の中に入れてしまったのが始まりとか、連隊所属料理人がケーキ生地を大砲の弾の形にし、オーブンがないので、ナベに油を入れて揚げたのが始まりだとか。
揚げパンのようなものはドイツ語圏では1200年頃の修道院の献立表に記載されているものが最古の記録のようです。ただしこの頃のものは丸ではなく、長細かったという話です。そしてその両端がかぎ爪のように曲げられていたためにクラプフェン(Krapfen、中期高地ドイツ語 krapfe は「かぎ爪」という意味)と呼ばれ、その呼び名が今でも主に南ドイツなどの地域に残されています。
「Berliner ベルリーナー」は「Berliner Pfannkuchen ベルリンのパンケーキ」の省略らしく、主に北ドイツとドイツ西部ニーダーザクセン、ノルトライン・ヴェストファーレン、ラインラント・プファルツおよびバーデン・ヴュルッテンベルク州の一部、ザールラント、ドイツ語圏スイスなどでの一般的な呼称です。逆にベルリンを含むドイツ東部での名称は「Pfannkuchen プファンクーヘン」が一般的です。バイエルンやバーデン・ヴュルッテンベルク州の一部及びオーストリアでの名称は既に述べた「Krapfen クラプフェン」です。
中味はジャムが一般的ですが、地域によるバリエーションもシーズンによるバリエーションも様々です。
写真は今朝パン屋さんで買ってきたベルリーナーボックスです。上段は季節限定のもので、左からチョコ掛け、卵リキュール掛け、プリン入り。下段は左がマジパン入りで後の2つはいつでも売ってる普通のジャム入りベルリーナーです。6個も買うつもりはなかったのですが、6個入りボックスにすると安いよ~という売り文句についつられて買ってしまいました。おかげでダンナはご機嫌です(笑)
さて、なぜカーニバルにベルリーナー(プファンクーヘン)を食べるのかという疑問ですが、Esskultur(食文化)というサイトの記述によりますと、カーニバルのばか騒ぎの後に始まる断食に備えるためだそうです。断食前にカロリーたっぷりのものを一杯食べておこう、ということらしいですね。
ベルリーナーが中世から広く普及した理由は、油または油脂を使ってオーブンがなくても簡単に作れる手軽さだろうと言われています。ベルリーナーはドイツ・スイス・オーストリアばかりではなく、その他のヨーロッパの国々にも普及しています。ドイツ語版ウイキペディアの記事によりますと、ベルギーではブール・ド・ベルラン(boules de Berlin、ベルリンのパンケーキ)、オランダではベルリーナー・ボレン(Berliner bollen)と呼ばれ、通常真ん中で切られ、バニラクリームが入っているそうです。ブルガリアではポニチュキという名称で、バニラ・カスタードクリームまたはベリー類のジャム入り。ポーランドではポンチュキ(Pączki)という名称。フィンランドではジャム入りのベルリーナーはヒロムンキ(hillomunkki、マーマレード・クラプフェン)、糖衣バリエーションはベルリーニンムンキ(berliininmunkki、ベルリンのクラプフェン)として知られています。ノルウェーではベルリーナーボラー(berlinerboller)という名で、ジャムまたはバニラカスタードの入ったものがあります。スロベニアではトロヤンスキー・クロフ(trojanski krof)と言い、あんずジャム入り。オーストリアのベルリーナーが一般的にあんずジャム入りなので、それが伝わったものと考えられます。以上に挙げた国はドイツまたはオーストリアと近接しており、関係も良きにせよ悪しきにせよ密接にあったので、菓子パンに同じものがあっても不思議はないのですが、意外なのはポルトガルに伝わっているボラス・デ・ベルリン(bolas de Berlin)とチリのベルリネス(berlinés)ですね。いつだれが持ち込んだのか興味深いです。
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