ドイツの法体系を表す語彙と法律関係の書き方をご紹介します。
Das deutsche Rechtssystem ドイツの法体系
ドイツの法体系 das deutsche Rechtssystem は私法 das Privatrecht と公法 das öffentliche Recht から成ります。
私法には以下の法分野 Rechtsgebiete が含まれます。
1.Bürgerliches Recht 民法
2.Handelsrecht 商法
3.Arbeitsrecht 労働法
4.Gesellschaftsrecht 会社法
公法には以下の法分野が含まれます。
5.Staatsrecht 国法
6.Verwaltungsrecht 行政法
7.Prozessrecht 訴訟法
8.Strafrecht 刑法
以上は「法分野」という分類であって、そういう名称の個々の法律があるわけではありません。
どの法分野に属するかで、管轄する裁判所が決まります。
裁判所には以下の種類があります。
1.Ordentliche Gerichte in Zivil- und Strafsachen 民事・刑事の通常裁判所
2.Arbeitsgerichte 労働裁判所
3.Verwaltungsgerichte 行政裁判所
4.Finanzgerichte 財政裁判所
5.Sozialgerichte 社会裁判所
6.Verfassungsgerichte 憲法裁判所
Juristische Schreibkonventionen 法律に関する書き方
賃貸契約 Mietvertrag や売買契約 Kaufvertrag、普通取引約款 Allgemeine Geschäftsbedingungen、労働契約 Arbeitsvertrag などなど普段から法的効力のある文書に触れることがあると思いますが、それが母語であっても難解であることが多いのに、外国語となってはさらに難易度が上がるかと思います。
在独30年になる私にとっては日本語の法律用語の方が馴染みがなく、さらに日常の言葉との乖離が激しいためにドイツ語の法律用語より難解に感じますけど、それはさておき、ここでは法律の内容ではなく、書き方についてご紹介したいと思います。
... Dem Missbrauch von AGB wird dadurch entgegengewirkt, dass unangemessene AGB-Klauseln in §§ 307 - 309 BGB für unwirksam erklärt werden.
(普通取引約款の悪用に対しては、民法典第307~309条において不適切な普通取引約款を無効と宣言することによって対抗する。)出典、Taschenguide Recht BGB, Julia Preußer
上の文を見てもお分かりいただけるように、ドイツ語での法律関係の文書は略語のオンパレードです。この短い一文には AGB = Allgemeine Geschäftsbedingungen 普通取引約款と BGB = Bürgerliches Gesetzbuch 民法典の2つだけですが、基本的に法源 Rechtsquelle となる法律が引用される場合、公式の略語のみが使用されるため、その略語になじんでいないとちんぷんかんぷん度に拍車がかかることになります。文書だけでなく、話す場合でも通常は略語や短縮名称を使用します。
日常生活において最も重要な法源は民法典ですが、その他にも重要な法律の略語を以下に挙げます。
GG = Grundgesetz 基本法
BGB = Bürgerliches Gesetzbuch 民法典
HGB = Handelsgesetzbuch 商法典
SGB = Sozialgesetzbuch 社会法典
StGB = Strafgesetzbuch 刑法典
AktG = Aktiengesetz 株式法
GmbHG = Gesetz betreffend die Gesellschaften mit beschränkter Haftung 有限会社法
ArbZG = Arbeitszeitsgesetz 労働時間法
KSchG = Kündigungsschutzgesetz 解雇保護法
ZPO = Zivilprozessordnung 民事訴訟法
StPO = Strafprozessordnung 刑事訴訟法
StVO = Straßenverkehrsordnung 道路交通法
その他さまざまな特別法とその略語がありますが、出会ったらその都度検索するしかないですね。リストアップして覚えるには数が多過ぎますので。
ドイツ連邦法務消費者保護省 Bundesministerium der Justiz und für Verbraucherschutz のサイトに法律の検索ができるデータベースがあります。https://www.gesetze-im-internet.de/aktuell.html
「なんとかという法律の第何条第何項に基づいて~」などと具体的な法律を引用する場合は、gemäß(gem. と略されることが多い)や nach の後に § 305 BGB などのように第何条という番号を先に述べてから法源を述べます。§ は Paragraph(パラグラーフ)と読みます。その下にいくつかの項目がある場合は、§ 305 Abs. 1 BGB と Absatz の略語 Abs. を追加します。
GG 基本法では Paragraph ではなく Artikel が使用されているため、引用する際は Art. という略語を使います。
例:Art. 1 Abs. 1 GG.
複数の条項を同時に引用する場合は上の例のように § 記号を重ねて §§ とし、その後に条項の番号をコンマで区切って並べるか、条項が連続している場合は §§ 307 - 309 BGB のように - で最初と最後の条項の番号を述べます。または最初の条項の番号の後に f. や ff. を添えることもあります。f. は folgende の略で、1つであれば後続の条項が1つであることを示し、ff. であれば後続条項が2つ以上であることを示します。
i.S.d. § 305 BGB のように法文を引用することもあります。i.S.d. は im Sinne des/der の略で、「~の意味・意義に従い」を意味します。
§ 305 BGB kommt zur Anwendung などのように「(これこれの法律が)適用される」という場合は zur Anwendung kommen と言います。
die Rechtsprechung 判例や das Gericht 裁判所を主語にして「(法律を)適用する」anwenden と言うこともできます。
Die Rechtsprechung tendiert dazu, die §§ 677 ff. BGB auch dann anzuwenden, wenn ...
(判例では、...の場合でもなお民法典第677条以下を適用する傾向がある)
出典、Taschenguide Recht BGB, Julia Preußer
余談ですが、やたらと法律や規則を引用してそれを振りかざす人のことを Paragraphenreiter と言います。
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