ジャーナリストの Ronja von Wurmb-Seibel が2022年に上梓した「Wie wir die Welt sehen - Was negative Nachrichten mit unserem Denken machen und wie wir uns davon befreien(私たちの世界の見方 - ネガティブなニュースが私たちの思考にどのような影響を与え、私たちがどのようにそこから解放できるのか)」は、副題からもお分かりのようにネガティブニュース(戦争やテロによる破壊、金融危機、飢餓、犯罪、気候変動と災害など)が人間の世界観に与える影響について考察しています。
要点をまとめると、ニュースなどによって形成された悲観的な世界観は事実に反するものであり、実情は報道される印象よりもずっとましであることが多いので、ポジティブな勇気づけられるようなニュースに目を向けましょう、ということです。
ニュースとは、往々にして「異常」を報じるものです。まっさらな紙の上の黒いシミのようなものです。
人間は危険に対して敏感に反応するようにできてますので、本能的にそうした「異常」に関する情報に関心を向けてしまいます。本来は自己防衛に役立つ習性でしたが、この情報社会においては、世界中の異常が瞬く間に報じられてしまうため、悪い情報が多すぎて末世的な世界観が形成されてしまいます。
こうした指摘自体は新しいことではなく、そこかしこで言われていることで、以前にブログでご紹介した「Rolf Dobelli, News Diet (Die Kunst des digitalen Lebens)」もこの系譜に連なるものです。ただ、こちらはラジカルな「ニュース断ち」を提唱しているのですが。
著者 Ronja von Wurmb-Seibel は、悪いニュースを「体に悪いけどクセになるジャンクフード」に譬え、より健康的なニュースの消費を呼びかけ、Wunderformel Scheiße plus X(魔法式「クソプラスX」)を提唱しています。
Scheiße(クソ)とはニュースで報じられるような刺激の強い異常事態ばかりでなく、ごく日常的な悪いこと・問題を指しており、Xはこれに対する対処法です。必ずしも根本的な解決である必要はなく、見方や考え方を変えて問題を問題として捉えない、またはその中にもポジティブな側面を見つけるなどでも構いません。とにかく、Scheiße と罵って不平不満あるいは不安を募らせ続けるのではなく、Xを探すことが肝要だと言います。
個人的な出来事ではなく、世界の出来事に関しては、普通の「異常」ばかり報じがちなニュースではなく、例えば NDR Info のポッドキャスト Perspektiven や Tagesschau の #Lösungsfinder、英語圏ではBBC の People Fixing the World 等の閲覧が推奨されています。
これらは Konstruktiver Journalismus 建設的ジャーナリズムと呼ばれ、人々が世界をよくするために行っている様々な取組みや試みについて報じ、希望や勇気を与えてくれます。
まずは現状認識とドイツ語の勉強のためにこの本を読んでみませんか。😀