今回はドイツ語文法書をご紹介します。
宍戸里佳著、「しっかり学ぶ中級ドイツ語文法(音声付)」(ベレ出版)は、初級の復習を兼ねた文法書で、大きく3部からなります。
第1部 動詞の使い方
第2部 名詞・代名詞の使い方
第3部 形容詞・副詞
伝統的な中級ドイツ語文法に比べて親しみやすいレイアウトで、説明が複雑怪奇に陥らずに、分かりやすいところが魅力です。
使い方
なんとなく「ドイツ語の動詞の形はいろいろ変化した」とか、「冠詞を覚えるのがめんどくさかった」など、うっすらと初歩の初歩を思い出せる程度の方でもまだ思い出して基礎を固められるように、それぞれの部門に基礎編と応用編があります。
また、項目ごとに「思い出しておこう」や「ワンポイントレッスン」など重要ポイントがまとめてあり、練習問題で締めくくられます。ところどころに「中級へのカギ」というコラムが挿入され、紛らわしいまたは間違いやすい文法現象の深掘りが提供されています。
使い方は人それぞれでいいと思いますが、私のお勧めは以下の通りです。
1)初級を一通りやったばかりの場合
第1部~3部の基礎編 → 応用編 → コラム「中級へのカギ」
2)ドイツ語を以前に習ったことがあり、わずかな基礎を除いてほとんど忘れている場合。
第1部~3部の基礎編のみをまず学習し、その際、「思い出しておこう」という囲い込みの内容と「ワンポイントレッスン」の内容を重点的に復習 → 応用編 → コラム「中級へのカギ」
知識の定着には、繰り返し練習する以外はないのですが、本書の練習問題はごく基本的なものが項目ごとに数問設けられている程度ですので、この文法書を一通りやったらなんとかなることは残念ながらありません。
実際にドイツ語が使えるようになるには、本書で紹介されている文のパターンを身につけると同時に慣用句も含めた語彙力・表現力を高め、発話の練習することも必要です。文法の知識だけではそのような運用能力は身につきません。
ヨーロッパ言語共通参照枠の定義による中級者(B1)とは、以下の要求を満たしている人を指します。
仕事、学校、娯楽で普段出会うような身近な話題について、標準的な話し方であれば主要点を理解できる。
その言葉が話されている地域を旅行しているときに起こりそうな、たいていの事態に対処することができる。
身近で個人的にも関心のある話題について、単純な方法で結びつけられた、脈絡のある文を作ることができる。
経験、出来事、夢、希望、野心を説明し、意見や計画の理由、説明を短く述べることができる
また、準上級者(B2)の要求水準は以下の通りです。
自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的かつ具体的な話題の複雑な文の主要な内容を理解できる。
お互いに緊張しないで母語話者とやり取りができるくらい流暢かつ自然である。
かなり広汎な範囲の話題について、明確で詳細な文を作ることができ、さまざまな選択肢について長所や短所を示しながら自己の視点を説明できる。
以上のような言語運用能力を身につけられるように、関心のある話題や自分が出会いそうな状況で必要になりそうな語彙や表現などを調べ、想定した状況で自分が言うであろうことを本書で紹介されているパターンを使ってドイツ語文を作るなど自分なりの練習を積んでいくことをお勧めします。