今回は三修社の「改訂版 耳が喜ぶドイツ語 リスニング体得トレーニング Hören macht Spaß!」をご紹介したいと思います。
ネイティブの速度で録音された100文以上のテキストが日本語対訳付きで収録されており、紙書籍版であればCD2枚付き、電子書籍版であれば https://www.sanshusha.co.jp/audiobook/ からシリアルコードを入力することで音声データをダウンロードできます。audiobookのアプリをスマホにダウンロードすれば移動中でもリスニングの練習が可能になります。
本書はSTEP1の「耳慣らし」からSTEP3の「ステップアップ」までの3段階で構成され、ドイツ語圏の生活・歴史・文化・現代社会事情を紹介するドイツ語テキストとその日本語対訳、プラステキストに使われている単語のリストが掲載されています。
リスニングの練習に生のドイツ語ニュースなどを聴いたり、DWなどで提供されているオーディオや動画マテリアルを使うにはドイツ語力が少々不足しており、日本語の解説が欲しいという方にちょうどいいと思います。
「耳慣らし」はヨーロッパ言語参照枠のレベル分けで言えばA2~B1、「ステップアップ」の長文はB2~C2レベルに相当すると思います。
読み物としても十分に面白い内容です。
「ネイティブの速度」とは謳っていますが、ラジオのような音声だけのメディアで普通の速度という感じです。日常会話に比べると発音がはっきりときれいで、ややゆっくりめです。
単語リストと対訳のみで文法的な解説はないので、ある程度ドイツ語の文法に馴染んでいて、変化形が何なのか認識できる、調べることができるレベルに達している方でないと理解は難しいかな、というレベルです。
このため、特にB1~B2あたりでリスニングが伸び悩んでいる方におすすめです。
A2の方はゆっくり時間をかけて文法の勉強と並行してSTEP1から2まで取り組むのがいいでしょう。
この本の日本語対訳の方はそれほど詳しくはチェックしていないのですが、ざっと見た限りでは単語リストも対訳も完璧で、私がいつも意図せずに見つけてしまうような小さなエラー(またはツッコミどころ)が1つも見つかりませんでした。そういう意味で私的には若干つまらないのですが(笑)、客観的に言えばこの本の質が非常に高いことを示しています。
ただ、何度も聞いて、一つ一つの単語が聞き取れるかどうか、意味が理解できるかどうかを目標にすることはお勧めしません。重要なのは、テーマが何であるかを把握し、テキストの内容を大雑把に把握できるようになることです。分からない単語も辞書を引かずに文脈から類推する訓練をしてください。
本書の難点は、日本語対訳が載せられているだけで、理解度をテストするような質問がないことです。このため、聴き取りの「global verstehen 大雑把に内容把握する」ことと、「detailliert hören 詳細に聴く」ことはできても、「selektiv hören 選択的に聴く」訓練ができません。このコンセプト上の難点を知った上でお使いください。